建物明渡請求訴訟の流れ
賃料滞納(不払い)発生
支払い催促
電話、メール、手紙、郵送等
支払われる
支払われない
最終催告兼契約解除通知
支払われる
送達不可
任意退去
即日断行
支払われない
賃貸借契約解除
建物明渡請求訴訟提起
送達完了
裁判(口頭弁論)
控訴なし
判決確定(言渡し)
強制執行申立
催告
断行
付郵便送達
公示送達
現地調査
居住実態有
居住実態無
全体の流れ
1. 賃料滞納(不払い)の発生
1.1 支払い催促
一般的に賃料が期日を1週間過ぎても振り込まれない場合、管理会社が賃借人に電話、対面、郵便等により支払の催促をします。それでも支払いがなされず、連帯保証人を定めている場合は同保証人に同様の催促を行います。1~2か月間に数度催促を行うことが一般的です。後々の証拠として記録・保管しておくことが重要です。
また賃借人と連絡が取れる場合、滞納額の分割払いや支払猶予で解決できる可能性もあります。
1.2 任意交渉
賃借人が任意退去するならば裁判を経ての強制執行にかかるような、訴訟費用、そして残置分撤去・保管費用も要らず、最も賃貸人にありがたいものと言えます。しかし任意退去を期待して延々と交渉を重ねても、結果賃借人が退去しないならば、滞納賃料が更に増大するだけで終わることになります。
よって任意交渉は裁判手続きと並行して行うことが望まれます。
1.3 自力救済の禁止
賃貸人が賃借人に対して任意退去を促す交渉をすることが直ちに違法になるわけではありませが、それが社会通念上相当な範囲を超えるような様態であれば,、違法性を帯びることになります。例えば、1日に何度も催促の電話をしたり訪問する等の場合、裁判官によっては社会通念上相当な範囲を超えるとされ、違法と判断される可能性もあります。
賃借人に無断で鍵を交換する、残置物を撤去する、電気や水道を止める等、退去を強要するとしか言いようのない行動は、逆に賃借人から損害賠償請求をされるだけでなく、強要罪等の刑事責任を問われる可能性を惹起させます。
法は、緊急避難などの極めて例外的な場合を除いて、自力救済を禁じております。
「追い出し屋」と疑われるような言動も「追い出し屋」に依頼することも、決して実行してはいけません。
1.4 借地借家契約における信頼関係の破壊
賃貸借契約においては、相手方の債務不履行があった場合に、直ちに契約解除を認めるのではなく、賃貸人と賃借人の間の信頼関係が破壊されたと評価できるかどうかで契約解除の可否を判断するという法理論が存在します。
例え賃料1カ月の滞納で契約解除できる旨の定めが賃貸借契約上あっても、それだけをもって契約解除の正当性「信頼関係の破壊」があったとは認められない傾向にあります。一般的に滞納期間が2ヵ月の場合は裁判によって判断がわかれ、3ヵ月に及ぶと「信頼関係の破壊」があったと請求が認容される傾向にあります。
2. 契約解除通知
2.1 最終催告
さて、何度も支払い催促をしても賃料滞納が「信頼関係の破壊」があったと認容され易い3ヵ月に及んだ場合、賃貸借契約の解除の意思表示を行います。
法は相当期間を設けての催告を原則としているため、いつまでに支払わなければ解除する旨の催告を行う必要があります。それを含めて催告には少なくとも、① 債務の指示、② 履行方法の指定、③ 相当の期間の指定 を記載する必要があります。
①債務の指示とは、債務者である賃借人がすべきことをわかるように指示することです。賃料滞納の場合、いくら支払うのかをわかるように記載する必要があります。
②履行方法の指定では、一般的に通常の賃料振込先や代理人弁護士の銀行口座を指定します。
③催告期間が短すぎる場合、裁判官に解除無効と判断される可能性があり、賃料のような金銭債権であれば一般的には賃借人に通知が届いてから5日間~1週間を期日と設定することが多いでしょう。
2.2 契約解除
上記の3要素①債務の指示、②履行方法の指定、③相当の期間の指定 を充足する有効な催告をしたのち、それでも相当期間内に未払賃料の支払いがなければ賃貸借契約の解除権が有効に発生していることになります。
2.3 送付方法
賃貸借契約の解除通知は、特定記録郵便と内容証明郵便の両方の方法をもって送付することが望まれます。法は、意思表示はその通知が相手方に到達した時からその効力を生ずると定めており、発信主義ではなく到達主義を採用しています。そのため解除の意思表示が賃借人に到達していることを立証する必要があります。
到達とは、意思表示の内容を相手方が知ることができる状態になったことを指し、相手方が実際に内容を知っている必要はありません。例として自宅ポストに通知が投函された、事務所に書類が届けられたことで到達とみなされます。その到達の事実を証明するものが特定記録郵便となります。
ただし特定記録郵便では送付した書面の内容が記録に残らないという弱点があります。
その弱点を補うものが内容証明郵便で、差出人、受取人、文書の内容、差し出した日時の4点が証明できます。しかし内容証明郵便は手渡しで相手に受け取らせる必要があるため、不在や受け取り拒否があると郵便が差出人に戻り到達させられないという弱点があります。そしてこの弱点を補うものが前述の特定記録郵便です。
特定記録郵便と同内容の内容証明郵便を送付することで、特定記録郵便が内容が何であったかを内容証明郵便で裏付けし、特定記録郵便によって到達を裏付け、お互いに弱点を補うことできます。
3. 訴訟提起
3.1 必要書類
訴状の作成や訴状添付のため一般的に以下の書類が必要になります。
・賃貸借契約書
・銀行口座通帳の写し等滞納状況がわかるもの
・内容証明郵便・特定記録郵便の写し
・登記事項証明書(不動産登記簿謄本)
・固定資産評価証明書
・法人の登記簿謄本(法人の場合)
3.2 物件の特定
建物明渡請求訴訟を提起する際は、別紙物件目録を訴状に添付し、対象物件を正確に特定する必要があります。強制執行の際にも使用される非常に重要な書類です。誤った記載や曖昧な記載がある場合、裁判所に受理されない、または執行段階になって執行不能になる恐れがあるため、繰り返し記載内容をチェックすることが求められます。
また住居やテナントの他、駐車場等も借りていた場合、それらも併せて明渡請求をするため同様に特定が必要となります。別紙物件目録には物件の特性に応じて、以下の項目を記載します。
項目
項目・記載例
建物の所在
建物の住所。登記事項証明書と一致させる
登記上の番号
建物の種類
居宅・共同住宅・店舗など
構造
木造・鉄骨造、2階建など
建物の床面積(㎡)
1階XXX(㎡)2階 XXX(㎡)
明渡対象物件の平米
XX㎡ など
建物の家屋番号
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
住居表示
一般的に使用される住所を記載
①~⑤までは、登記事項証明書の記載をそのまま書き写します。一文字でも異なっていた場合、執行不能となる恐れがあります。判決の際に誤植に気づいても裁判官が便宜を図ってくれるとは限らないため、注意が必要です。
⑥については、一般的に賃貸借契約書等に記載されております。
⑦については、一般的に使用している住所を記載します。登記事項証明書の不動産所在の表示方法は地番までで、マンション名や部屋番号は不記載であることがほとんどです。執行段階において執行官は地番よりも住居表示を重視して物件を特定するため、地番と住居表示とが一致しない場合、住居表示がなければ執行官が執行できなくなるリスクが高まります。
また、明渡対象に駐車場やトランクルームがある場合は、別紙図面を添付しより特定し易くする手法も多く使われています。
3.3 訴額計算
建物明渡請求訴訟では、基本的に「建物の固定資産税評価額の半分」が訴額となります。
もし建物の一部だけを貸している場合には、建物全体の面積に対して借りている部分の面積がどのくらいかを割合で計算し、その部分に応じた金額を基準とします。
裁判を起こすときには、訴状に印紙を貼って提出する必要があります。
この印紙代は、建物明渡請求の場合、建物の評価額を基に計算した「訴額」によって変わります。
期限までに家賃などの支払がない場合は、すぐに裁判の手続を始めます。状況によっては、本格的な裁判の前に「仮処分」という仮の措置をとることもあります。
裁判の結果が出るまでには、少なくとも1~2か月、場合によってはさらに時間がかかることもあります。そのため、早めに準備を進めることが大切です。
当事務所では、ご相談の段階から書類作成を始めており、多くの場合、支払期限の翌日には訴状を裁判所へ提出しています。
裁判では、建物の明渡しを求めると同時に、賃借人や保証人に対して滞納している家賃や遅延損害金の支払も請求します。
3.5 送達
裁判を始めるにあたっては、まず裁判所から相手方へ訴状が正式に届けられること(送達)が必要です。
裁判所が「被告が訴状を受け取った」とみなさなければ、訴訟は先へ進めることができません。
しかし実際には、相手が不在で受け取りを拒否していたり、住民票の住所に住んでいなかったりすることもあり、その場合は送達に時間がかかることがあります。
こうしたケースでも、裁判所には再送や付郵便送達といった手続が用意されており、最終的には必ず訴訟を進めることが可能です。
当事務所では、相手方の住所や居住実態を丁寧に確認し、送達が滞らないよう準備を進めております。
「相手が受け取らなかったら裁判ができないのでは」とご心配される方もいらっしゃいますが、その点は心配いりません。
安心してお任せください。
3.6 占有移転禁止仮処分
占有移転禁止の仮処分とは、賃貸物件の明渡請求を行う際に、相手方が部屋の占有を他人へ移してしまうのを防ぐための手続です。たとえば、賃借人が無断で第三者に転貸していたり、明渡訴訟を起こされる前に他人に名義を変えて逃れようとする場合に利用されます。
この仮処分を行っておくと、現に部屋を占有している者以外に占有を移すことが禁止され、もし違反して他人へ渡しても、仮処分時点の占有者を相手に訴訟を続けることができます。つまり、明渡請求の実効性を確保するための「占有状態を固定する」措置です。
賃貸オーナーや管理会社にとっては、無断転貸や夜逃げなどのトラブルの際に、占有移転禁止の仮処分を早めに申し立てておくことで、訴訟を有効に進めることができます。これを怠ると、実際の占有者が入れ替わってしまい、手続をやり直さなければならなくなる場合もあります。
明渡訴訟や強制執行を確実に行うためには、早い段階での仮処分申立が有効です。オーナーや管理会社の方で占有関係に不安がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
4. 裁判
4.1 口頭弁論
口頭弁論とは、裁判所で原告と被告がそれぞれの主張を述べ合う正式な手続です。建物明渡請求の場合、裁判はまず「第一回口頭弁論」で始まり、原告側(家主・オーナー側)が訴状の内容を説明し、被告(賃借人)側が反論するかどうかが確認されます。
実際には、賃借人が出廷せず反論もしないケースが多く、その場合は第一回の期日で審理が終結し、次回期日(およそ1か月後)に判決が言い渡される流れになります。つまり、建物明渡の訴訟は多くの場合、2回ほどの期日で完結します。
弁護士が代理人として出廷するため、オーナーご本人が裁判所へ行く必要はほとんどありません。明渡請求は、書面と証拠を整えておけばスムーズに進む手続であり、実際の口頭弁論も淡々とした形式的なものにとどまります。
明渡請求を確実に進めるためには、賃貸借契約書や督促の記録、滞納状況などを早い段階で整理し、訴訟に備えておくことが大切です。
4.2 判決
判決とは、裁判所が原告と被告それぞれの主張や提出された証拠をもとに、最終的な結論を示すものです。建物明渡請求の裁判では、裁判官が「明渡しを命じる」「請求を棄却する」といった形で判断を言い渡します。
賃貸物件の明渡訴訟の場合、多くは賃料滞納や契約違反が明らかであるため、オーナー側の請求が認められる判決が出るケースがほとんどです。訴訟の進行も比較的早く、口頭弁論が1〜2回で終わったあと、通常1か月ほどで判決が出ます。
判決が確定すると、相手方が自発的に退去しない場合でも、**強制執行(立退きの実施)**に進むことができます。つまり、判決は明渡手続の最終段階に進むための「法的な土台」となる重要なものです。
弁護士が代理人として裁判を進めるため、オーナーご本人が出廷する必要はほとんどありません。判決までの流れをしっかり踏んでおくことで、明渡を確実に実現することができます。賃借人の滞納や不在などでお困りの場合は、早めの法的対応が円滑な解決につながります。
4.3 判決確定
判決確定とは、裁判所の判決に対して相手方が不服を申し立てる期間(通常は判決送達から2週間)が過ぎ、その内容が最終的に確定することをいいます。
建物明渡請求の裁判でオーナー側が勝訴した場合でも、判決が確定しなければすぐに強制的な立退きを行うことはできません。相手方が控訴しないまま期間が経過すると、判決が確定し、その後に**強制執行(建物明渡の実施)**を申し立てることが可能になります。
実務上、賃借人が裁判に出廷せず欠席判決となった場合などは、控訴されることはほとんどなく、判決送達から2週間で確定することが多いです。確定すると、裁判所が発行する「判決確定証明書」を取得でき、これをもとに明渡しの強制執行へと進みます。
賃料滞納や無断占有などで退去が進まない場合でも、判決が確定すれば法的に明渡しを実現できる段階に入ります。
4.4 仮執行宣言
判決が出たのに、すぐに明渡しができない。そんな状況を打開するのが仮執行宣言です。
通常、判決が確定するまでには時間がかかりますが、仮執行宣言が付いていれば、確定前でも強制執行に着手することが可能になります。
これにより、滞納や不法占拠が続いている物件でも、迅速に明渡し手続きを進めることができ、空室期間の短縮や収益回復につながります。
仮執行宣言は、裁判所が「この判決は執行しても問題ない」と判断した場合に付けられるもので、法的にも認められた強力な手段です。
当事務所では、仮執行宣言付き判決を前提とした明渡し業務を多数取り扱っており、スピーディかつ確実な対応を心がけています。
判決が出た後の不安や待ち時間を最小限に抑えたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
5. 強制執行(明渡)
5.1 強制執行申立
強制執行申立とは、裁判で建物の明渡しを命じる判決が確定したにもかかわらず、賃借人が自発的に退去しない場合に、裁判所を通じて強制的に退去させる手続のことです。賃貸オーナー側が裁判所に「強制執行の申立」を行うことで、最終的に明渡しを実現できます。
建物明渡の強制執行は、まず裁判所の執行官が現地を確認する「催告(さいこく)」から始まります。催告では、賃借人に対して退去期限を伝え、その後も立退きがなければ、日を改めて執行官立会いのもと荷物の搬出・鍵の交換が行われます。
これにより、物件の占有を正式にオーナーへ戻すことができます。
強制執行は法的に認められた正当な手続であり、オーナーや管理会社が自力で追い出すこと(いわゆる自力救済)は法律で禁止されています。
裁判所を通して行うことで、トラブルを避けながら確実に明渡しを完了させることができます。
多くのケースでは、判決確定後に内容証明などで自主的退去を促しても応じない場合に申立を行います。争いがなければ、申立から1~2か月ほどで物件が明け渡されるのが一般的です。
賃料滞納や無断占有でお困りのオーナー様は、強制執行まで見据えた対応を早期に検討することで、安心して次の賃貸募集へと進むことができます。
5.2 執行補助者の選定
建物明渡の強制執行を実施する際に、現場で執行官を補助する業者を決めます。
実際の明渡し作業では、執行官が立ち会い、荷物の搬出や鍵の交換、残置物の処理などを行いますが、これらの作業はすべて執行補助者によって行われます。
執行補助者には、引越業者や鍵業者、残置物の保管業者などが選任されます。オーナー側で信頼できる業者を抱えている場合は、その業者を指定して裁判所に申請することも可能です。一方、地域によっては、執行官が普段から連携している業者が指定されることもあります。
地方の裁判所ではこのような運用が多く見られます。
どの業者を選ぶかによって、費用や作業のスピード、残置物処理の丁寧さなどが大きく異なるため、慎重な選定が重要です。信頼できる補助者を選んでおくことで、現場でのトラブル防止や、スムーズな明渡完了につながります。
強制執行は、法的な段階としては最終手続ですが、実務では執行補助者の対応力が結果を左右する場面も多くあります。事前に弁護士を通じて補助者を選定し、裁判所や執行官との連携を整えておくことが安心です。
5.3 催告
催告(さいこく)とは、建物明渡の強制執行に入る前に、裁判所の執行官が現地に赴き、賃借人に対して退去を命じる手続です。執行官は「この日までに退去しなければ強制的に明渡を行う」と正式に通知し、賃借人に最後の自主退去の機会を与えます。
多くの場合、催告のあと1〜2週間の猶予期間が設けられ、その間に賃借人が退去すれば、強制的な明渡作業を行わずに解決します。実際には、催告の段階で退去が完了し、強制執行まで至らないケースも少なくありません。
催告には、執行官のほか鍵業者や引越業者などの執行補助者が同行することもあり、現場の確認や今後の作業準備を行います。オーナーや管理会社にとって催告は、明渡を円滑に進めるための重要な手続であり、法的にも安全で確実な方法です。
5.4 断行
催告の期日を過ぎても退去が確認できない場合には、いよいよ**明渡断行(だんこう)**の手続に進みます。
断行とは、裁判所の執行官が中心となり、賃借人の残置物を搬出し、建物を明け渡させる強制執行の最終段階です。
この手続により、オーナー様は法的に建物の占有を取り戻すことができます。
断行の当日は、執行官が現地で作業を指揮し、鍵業者や運搬業者などの執行補助者が立ち会って実際の搬出作業を行います。
一連の流れはすべて法律に基づき進められ、トラブルを避けつつ円滑に明渡を完了させることが可能です。
5.5 残置物の撤去・処分
明渡断行が完了すると、室内に残された家具や家電、生活用品などの残置物について、裁判所の指示に基づき撤去作業を行います。
これらの物は原則として賃借人の所有物とされるため、勝手に処分することはできません。
執行官の立会いのもと、鍵業者や運搬業者などが協力して残置物を搬出し、保管または処分の手続を進めます。
保管期間中に賃借人から申し出があれば返還に応じることができますが、期間経過後も連絡がない場合は、法令に則り処分を行うこととなります。
当社では、これら一連の手続を法的に適正な手順で安全に進めるサポートを行い、オーナー様の負担を最小限に抑えます。